『下り立ち植ゑし』のし
J・D・ロブをご紹介いたします。濁点付いてますけど、ジェイのジ(し)ということで。
これはノーラ・ロバーツと言う方の別名義のお話です。基本、どちらもハーレクイン系なのですが、J・D・ロブ名義の作品というかシリーズはイヴ&ローグのみです。時代設定は近未来物です。
主人公が警部補という役職から、バイオレンスも辞さないというタイプなので、甘い恋愛物が多いハーレクインとは一味違ったものとなっています。その恋人(後に夫)は世界有数というどろこか宇宙一のお金持ち。
しかもそれを一代で築いたという彼は、法律の目をかいくぐりグレーゾーンを掠めることを得意な人物で、正義と法律を守る警察官の主人公とは正反対といっても良いくらいの2人。ですので色々と争いも絶えません。口論だけでなく手も足もでる。初めてですよ、こんなに本気で殴りあうカップルの出てくるハーレクインは。
根底はハーレクインですので、やはり主人公とその恋人(後に夫)とのやり取りをお楽しみいただければと思います。2人が恋に落ちるシーンから恋に落ちたと認めるまでの展開は、ハーレクインだなぁと思いました。
いやまぁ、この辺はわかる方だけわかっていただければ(笑)
日本人はお互いをじっくり知り合って想いを育てていく、というのが主流だったりしますが、海外では恋は落ちるものなのだそうです。いわゆる、キューピッドの矢が心臓を打ち抜くんだそうです。有名どころとしては『マディソン郡の橋』とかですね。
閑話休題
生きてきた環境も、性格も、信条もことごとく違う2人ですが、そんな2人が恋人となり、夫婦となって生きていく過程で、争い反発しあい、かといえば寄り添って労わりあっていきます。
頑なまでにまっすぐに生きてきた主人公が、じょじょに柔軟になっていく変化も、巻数を重ねる物語ならでは、です。
2人の恋は物語(巻数)が進むごとに変化をしていき、熱かったり、甘々だったり、シリアスだったり、バイオレンスだったり、と色々な面が見られます。様々な面があるということは、それだけお互いを真剣に想い、考え、労わっているからだと思うので。もちろん愛も。
また、巻を重ねていくごとに主人公のトラウマ問題や、周囲の人間模様の変化も見所です。
愛すること、大切にすること、その物や人を最低限にして生きてきた主人公が、だんだんとその範囲を広げ、成長していく様が描かれており、見事だと思いました。